この記事では、エレキギター初心者へ向けて低価格なマルチエフェクターを紹介します。
エフェクターを使って様々な音色を出すのはエレキギターの醍醐味の1つです。
1つの音色に特化したコンパクトエフェクターに対して、マルチエフェクターは1台にいくつものエフェクトを実装しています。
なるべく少ない予算でたくさんのエフェクトを使えるため、エレキギター初心者にもぜひ使ってほしい機材です。
マルチエフェクターといっても様々な製品があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
一概にどれがおすすめとは言えません。
そこでこの記事では2万円までのマルチエフェクターを取り上げ、それぞれの特徴を紹介していきます。
ここで紹介するのは全て実際に買って使った製品なので、ユーザーの生の声として参考になればと思います。
結論から書くと、今回紹介する5つの機種は次のような方におすすめです。
- ZOOM G1X FOUR:コスパを重視
- BOSS GT-1:予算2万円&アンプの前で使う
- MOOER GE150:なるべく低予算でIRを使いたい
- ZOOM MS-50G:サイズの小ささを重視
- VOX StompLab SL2G:価格の安さを重視
それぞれのマルチエフェクターのメリット・デメリットを把握するお役に立てば幸いです。
ZOOM G1X FOUR
最初に紹介するのはZOOMのマルチエフェクター「G1X FOUR」です。
この製品の良いところ・悪いところは次の通り。
- 値段が安い(1万円)
- デジタル感はあるが使いやすい音
- 特に軽い&小さい
- ヘッドホン練習可
- チューナー、ルーパー、リズムマシンあり
- おもちゃっぽい
- 本体の操作が特に面倒
(ただし、PCで音作りできるソフトあり) - エフェクト数5個という制限あり
- オーディオインターフェースの機能はない
ZOOM G1X FOURの良いところ
ZOOM G1X FOURのすごいところは、1万円という価格でこれだけの音質と機能を持っていることです。
他のマルチエフェクターと比べてG1X FOURの音質の方が勝っているということは流石にありません。
デジタル感はありますが、それでもヌケが良くて使いやすい音質になっています。
単純にコストパフォーマンという点ではG1X FOURは最高レベルです。
G1X FOURはマルチエフェクターにしてはサイズがかなり小さく、重さも600gと軽いです。
持ち運びに苦労しないだけでなく、部屋の中で使う際にもスペースを取りません。
これだけ小さなサイズにもかかわらず、
- ヘッドホン出力
- リズムマシン
- ルーパー
- チューナー
といった機能が備わっています。
1つ注意点として、ヘッドホンを使う際には「キャビネット」エフェクターの中の「MIC」というパラメータが重要です。
これをONにすることでヘッドホンからも最適な音質が得られます。
設定の仕方は下の記事で解説しているので、必要があればご覧ください。
G1X FOURでマイクのON・OFF設定を切り替える手順ZOOM G1X FOURの悪いところ
ZOOM G1X FOURは値段が1万円ということもあり、見た目はおもちゃっぽいです。
ただ実際に触ってみるとツマミやフットスイッチは壊れそうな印象はありませんでした。
ディスプレイのサイズが小さく画素も荒いため、本体での操作はちょっと面倒なのは否めません。
操作の面倒くささは、「Guitar Lab」というソフトである程度解消できます。
Guitar LabはPC上のソフトであり、G1X FOURのパッチを編集したり、エフェクトを管理できます。
PCの大きな画面とマウスを使えるのは本当に楽なので、じっくり音作りするのであれば使わない手はありません。
G1X FOUR用エディタソフトGuitar Labを使う方法
音作りの点については、G1X FOURは同時に使えるエフェクトが5個までという制限があります。
これはマルチエフェクターとしては少ない方です。
必然的に音作りの幅が狭まりはしますが、入り組んだ音作りをしない限り不足は感じません。
むしろ限られた選択肢で音作りしようとする分、余計に悩まずに済むとも考えられます。
機能面の注意点としてG1X FOURにはオーディオインターフェースの機能はありません。
つまりPCと直接つないで音のやり取りは不可能です。
背面のUSB端子はファームウェアの更新とエディタソフト「Guitar Lab」のために使います。
この仕様はあらかじめ理解しておいてください。
もしG1X FOURを使って録音などがしたい場合は、別にオーディオインターフェースを用意しましょう。
ペダルなしのG1X FOURもあり
G1X FOURからエクスプレッションペダルを抜いた「G1 FOUR」という兄弟機もあります。
こちらはペダルがない分値段も2000円ほど安いです。
ペダルはいらないという方はこちらをチェックしてみてください。
- 予算1万円
- コストパフォーマンスを重視する
- オーディオインターフェースの機能はなくてもいい
BOSS GT-1
次に紹介するマルチエフェクターは「BOSS GT-1」です。
良いところ・悪いところは次のとおり。
- アンプの前で使ったときの音は明らかに値段以上
- 特に空間系の広がりが豊か
- エディタソフト「TONE STUDIO」あり
- ヘッドホン練習可
- オーディオインターフェースの機能あり
- ヘッドホン(ライン)の音はいまいち
- 2万円にしては画面が小さい
- フットスイッチの踏み心地が独特&ダサい
- ヘッドホン出力がステレオミニサイズ
- リズムマシンなし
BOSS GT-1の良いところ
BOSS GT-1はアンプの前で進化を発揮するマルチエフェクターです。
特に空間系のエフェクトの広がりが豊かでした。
GT-1は20,000円弱の製品ですが、アンプの前で使った際の音質は間違いなく値段以上です。
音作りに関してはPC上のソフトである「TONE STUDIO」を使うと圧倒的にやりやすくなります。
とても分かりやすい画面で直感的な操作が可能です。
本体だけの操作だとどうしても面倒くさくなるため、ぜひご活用ください。
BOSS GT-1でエフェクト編集ソフトTONE STUDIOを使う方法
背面にはヘッドホン出力やAUX INといった練習に便利な入出力を備えています。
USB端子からPCに接続するとオーディオインターフェースとしても使えます。
専用のドライバーがASIOに対応しているため、セットアップ後はそのまま遅延のない音声のやり取りができます。
BOSS GT-1のドライバーをインストールする方法【Windows10の場合】BOSS GT-1の悪いところ
BOSS GT-1はアンプの前で使ったときの音は素晴らしいのですが、ヘッドホン(ライン)の音質はいまいちでした。
使えないことはないですが、特に歪みはリアルな音からは程遠いです。
よってGT-1はあくまで「アンプの前で使うもの」と考えるのをおすすめします。
機能面で残念なのはリズムマシンがないことです。
2万円およびそれ以下の価格帯の製品でもだいたいリズムマシンはついています。
細かい点として、ヘッドホン出力がステレオミニサイズなのは使いづらいです。
標準サイズのヘッドホンを挿そうとするとアダプターが必要になります。
- 予算は2万円
- 主にアンプの前で使う
MOOER GE150
続いて紹介するマルチエフェクターは「MOOER GE150」です。
良いところ・悪いところは次のとおり。
- IR(Impulse Respanse)を読み込み、ヘッドホンでもリアルな音質を再現
- コンパクトエフェクターとの相性が良い
- 本体でも操作しやすい
- ドラムマシンあり
- オーディオインターフェースの機能あり
- アンプの前だと音質は値段なり
- ヘッドホン出力がステレオミニ
- MASTERボリュームの音量が大きすぎる
- 中国のメーカーということで不安な人もいるかもしれない
MOOER GE150の良いところ
MOOER GE150の一番の特徴は、2万円という価格ながらIR(Impulse Respanse)を読み込めることです。
簡単に書くとIRとは、キャビネットやマイク、残響の特徴をデータ化したファイルのことをいいます。
IR(Impulse Response)とは何か – ギター用のおすすめも紹介
IRの読み込みができるマルチエフェクターは他にもありますが、2万円でそれができるのがGE150の大きなメリットの1つです。
IRはGE150の中でキャビネットモデルの1つとして扱われ、これによってライン(ヘッドホン)の音のリアル感が増します。
ネット上では様々なIRが無料・有料で配布されているため、いろいろ試してみるのも楽しいです。
IRは専用のエディタソフトから読み込めます。
GE150のエディタの使い方:プリセット編集とIRの読み込み
GE150のディスプレイは同サイズのマルチエフェクターと比べてかなり見やすいです。
カラー液晶で画素も細かいため、ひと目でたくさんの情報を確認できます。
マルチエフェクターというと本体での操作がどうしても面倒になりがちです。
しかしGE150は大きな画面のおかげで、本体での音作り・設定もそこまでストレスになりません。
表面は金属ですが、重さは688gと見た目以上に軽いです。
エクスプレッションペダルを下げると厚さは5cm以内に収まるので、持ち運びも簡単です。
GE150にはリズムマシンやルーパー、オーディオインターフェースの機能が備わっています。
マルチエフェクターに求められる基本的な機能があるので、リズム練習から録音までこれ1台でやりたい場合に便利です。
MOOER GE150の悪いところ
上に書いたように、IRの読み込みによってラインの音質は値段以上です。
一方で、MOOER GE150はアンプの前で使うとなると2万円の製品としては今ひとつな印象でした。
もう少し音のふくよかさや広がりがあればよかったと思います。
基本的にアンプにつなげて使うのであれば、同価格帯のBOSS GT-1に軍配が上がります。
細かい点として、ヘッドホン出力がステレオミニサイズなのが気になりました。
普通のヘッドホンは標準サイズなので、アダプターによる変換が必要です。
安定性の点から見ても、標準サイズのジャックだったらもっと便利でした。
全体の音量を管理する「MASTER」が大きすぎるのも残念なポイントです。
ちょっと上げただけで爆音になるので、最初は耳がいかれるかと思いました。
このデメリットは特にGE150をオーディオインターフェースとして使ったときに感じます。
- 予算2万円
- IRを使ってみたい
- アンプに接続するよりヘッドホン(ライン)の音を重視する
ZOOM MS-50G
マルチエフェクターとしては異色な「ZOOM MS-50G」も紹介します。
良いところと悪いところは次のとおり。
- コンパクトエフェクターと同じサイズ
- それでいてエフェクト数は172種類
- 値段が安い(1万円以下)
- 本体での操作は面倒
- ライブでのリアルタイムな操作には向かない
- オーディオインターフェースの機能はない
- ヘッドホン出力がない
ZOOM MS-50Gの良いところ
ZOOM MS-50Gはコンパクトエフェクターと全く同じサイズながら、中身はマルチエフェクターです。
標準的なエフェクター「BOSS DS-1」と比較してみました。
構造が全く同じなため、並べてパッチケーブルで接続できます。
小型のマルチエフェクターは数あれど、このサイズを実現しているのはMS-50Gだけです。
重さも他のコンパクトエフェクターと同じくらいです。
メインの素材は金属なため、安っぽさは全くありません。
このサイズにも関わらず計172種類のエフェクトが用意されており、出力に応じた設定まで出来ます。
1つのパッチの中で使えるエフェクトに5個までという制限はあるものの、シンプルな音作りであれば特に不足は感じません。
本機が発売されたのは2012年ですが、音質面では今もなおまだまだ使えるクオリティです。
もちろん値の張る製品と比べると音の豊かさやリアル感で劣りますが、アマチュアであれば十分遊べます。
それでいて1万円以下というリーズナブルな価格なのがMS-50Gのすごいところです。
ZOOM MS-50Gの悪いところ
一方、ZOOM MS-50Gは小型であるがゆえに操作性と機能面で見劣りします。
まず他のマルチエフェクターと比べて操作性はどうしても犠牲になっている面はあります。
ただ操作が面倒なだけであって、仕組み自体は難しくはありません。
触っていればそのうち使いこなせます。
もう1点付け加えると、MS-50GのフットスイッチでON・OFFできるのは、そのとき画面に映っているエフェクトだけです。
そして足で操作できるのはフットスイッチだけなので、リアルタイムでアレコレ音を変えるのには向きません。
その点でもあくまでコンパクトエフェクター風だとお考えください。
機能面では、MS-50Gにはオーディオインターフェースの機能はついていません。
つまりMS-50GとPCを直接つなげて音声をやり取りすることは不可能です。
USB Mini-Bの端子がありますが、これはファームウェア更新とエフェクト管理ソフト「Effect Manager」のために使います。
もし録音などがしたい場合、オーディオインターフェースを別に用意しましょう。
加えて、MS-50Gには他のマルチエフェクターのようなヘッドホン出力がありません。
これ単体でヘッドホン練習はできないため、その点も注意してください。
- 予算1万円
- なるべく小さい製品がいい
- リアルタイムな操作は基本的にしない
VOX StompLab SL2G
「VOX StompLab SL2G」は安さを重視する方におすすめです。
特徴は次のとおり。
- 5,000円前後という安さ
- それでいて遊びなら十分使える音質
- 金属製のボディ
- ヘッドホン出力、チューナーあり
- ディスプレイの情報が少ない
- 操作方法にクセがある
- 機能が少ない
- 2012年の発売から時間が経っている
VOX StompLab SL2Gの良いところ
VOX StompLabの最大の特徴は、5,000円前後という安さにあります。
マルチエフェクターにも色々な製品がありますが、ここまで低価格なのはStompLabだけです。
今回画像を載せているのはペダルありの「SL2G」ですが、ペダルなしの「SL1G」であればさらに1,000円近く安くなります。
性能については、1万円、2万円~の製品と比べると音質も機能も劣るのは否めません。
とはいっても、気軽な趣味としてマルチエフェクターを使いたいのであれば十分なレベルです。
アマチュアがちょっと遊ぶくらいの使い方なら何万円もする機材はいりません。
そこで最低限使えるクオリティでなおかつ安いものを、と考えたときにStompLabが有力な選択肢になります。
StompLabのボディはしっかり金属製で意外とおもちゃっぽくありません。
同じくVOXの「Amplug」は壊れやすいのがデメリットでしたが、StompLabはその点安心できます。
OUTPUT(出力)端子にはアンプだけでなく、ヘッドホンも接続できます。
実際のアンプを持っていなくても、ヘッドホンで静かに練習可能。
機能は絞られているとはいえ、LEDで視認性の高いチューナーがついています。
VOX StompLab SL2Gの悪いところ
VOX StompLabのディスプレイは本当に簡単なもので、デジタル数字と簡単なアルファベットしか表示できません。
これはマルチエフェクターとしては異色で、最初操作しようとしたときは混乱すると思います。
実際操作方法にはクセがあるので、他のマルチエフェクターに慣れている方でも取扱説明書はじっくり読む必要があるでしょう。
もちろん必要な説明は全て書かれているので、よく読めば使いこなせるようになります。
VOX StompLabで1から音作りする方法
StompLabは低価格な分、機能も削られています。
例えば、多くのマルチエフェクターに見られる次のような機能はありません。
- オーディオインターフェースの機能
- AUX IN
- PC上での音作り
値段が値段なので、これは仕方のない部分です。
あくまで軽く使うマルチエフェクターと割り切って考える必要があります。
StompLabが発売されたのは2012年であり、それ以降多くのマルチエフェクターが登場しました。
安さという点では未だに群を抜いていますが、コスパという点でいうと上で紹介した「ZOOM G1X FOUR」に劣る印象です。
あと数千円出せるのであれば、G1X FOUR(あるいはペダルなしのG1 FOUR)も検討してみてください。
- とにかく安さを重視する
- 最低限使える音質・機能があればいい
おすすめのマルチエフェクターまとめ
以上、エレキギター初心者の方に向けて5機種のマルチエフェクターを紹介しました。
それぞれのメリット・デメリットがお分かりいただけたと思います。
マルチエフェクター選びの参考になれば幸いです。
【ZOOM G1X FOURレビュー】高コスパを誇る1万円のマルチエフェクター 【BOSS GT-1レビュー】アンプの前で使うべき2万円のマルチエフェクター 【MOOER GE150レビュー】IR読み込み可能な2万円のマルチエフェクター 【ZOOM MS-50Gレビュー】ペダルサイズのマルチエフェクター 【VOX StompLab SL2Gレビュー】最安レベルでも実用的なマルチエフェクター