今回はZOOMから販売されているMULTI STOMP MS-50Gのレビューです。
一番の特徴はマルチエフェクターでありながらコンパクトエフェクターと同じサイズであること。
先に特徴をまとめると次のとおりです。
- 10000円以下の製品ながら、アンプの前で使うなら音質は決して悪くはない
- バージョンアップを経て172種類のエフェクトが使える
- サイズが小さいため、従来のマルチのようにかさばらない
- ヘッドホン出力がないため、単体でのヘッドホン練習が出来ない
- リアルタイムにパッチやエフェクトを切り替えるのはほぼ不可能
- 電源スイッチがない
MS-50Gが向いているのは、なるべく低価格でたくさんのエフェクトを使ってみたい人です。
様々なエフェクトに馴染みがなく、これから実際に触って勉強したい初心者の方には特におすすめできます。
一方、ヘッドホンで練習したい人には向きません。
加えて、ライブなどでリアルタイムにパッチを切り替えたい人も別の製品を検討したほうが良いと思います。
詳しいレビューについて以下に書いていきます。
MS-50Gが気になっている方はぜひご覧ください。
非常に長い記事なので、目次とTOPに戻るを活用していただければと思います。
ZOOM MS-50Gの基本的な仕様
まずはZOOM MS-50Gの仕様について見ていきます。
一般的なペダルと同じサイズ
MS-50Gはふつうのエフェクターとほとんど同じサイズです。
BOSS DS-1、BD-2と並べてみました。縦横のサイズともにほぼ変わらないのが分かると思います。
電池を抜いた重さは353g。
DS-1、BD-2(ともに330g弱)と比べて大差ありません。
コントロール
MS-50Gの操作は次のコントロールから行います。
- ダイヤル兼ボタン×3
- ボタン×4
- フットスイッチ×1
ダイヤルとボタンを区別するなら、合わせて11個のコントロールがあります。
まるでガラケーを操作するようで慣れるまでは少し大変ですが、一度分かればサクサク操作できると思います。
ディスプレイ
モノクロのディスプレイがついています。
サイズは3.8cm×2.9cm。
決して大きくはないですが、これも慣れれば特に見づらくは感じません。
電力について
MS-50Gは一般的なコンパクトエフェクターと同じ用に電池またはACアダプターで動作します。
ただし電池を使う場合、9V形ではなく単3電池×2を使います。電池は付属しています。この点ではマルチエフェクターに近いです。
ACアダプターを使う場合、公式ではZOOM AD-16が推奨されています。
それ以外にも、他社製ACアダプターやパワーサプライでの動作も確認しました。
BOSS PSA-100シリーズでも問題なく動作しました。
(写真は「PSA-100S」)
MAXON PD01はかなり古いパワーサプライですが問題なし。
そのため既に何らかのACアダプターやパワーサプライを持っていれば、新しく買い足す必要はないでしょう。
USB端子
MS-50GはPCとつないで次の2つが出来ます。
- ファームウェアの更新
- 専用ソフトEffect Managerによるエフェクトの追加・削除
このとき使うMS-50GのUSB端子は「miniB」になっています。
ケーブルは本体に付属せず、形状がややマイナーなので、上に挙げた機能を使うときは別途ケーブルを買い足さなければならない人もいるでしょう。
ファームウェア更新、Effect Managerについて詳しくは下の記事をご覧ください。それをする理由とやり方を解説しています。
MS-50Gのファームウェアを更新する方法 MS-50GでEffect Managerを使う方法ZOOM MS-50Gの良いところ
続いてはZOOM MS-50Gを実際に使って感じたメリット・デメリットについて書いていきます。
メリットは大きく分けて次の3つです。
- 10000円以下の製品ながら、アンプの前で使うなら音質は決して悪くはない
- バージョンアップを経て172種類のエフェクトが使える
- サイズが小さいため、従来のマルチのようにかさばらない
アンプの前なら音は悪くない
ギターの機材を語る上で何より重要なのは音質です。
MS-50Gはアンプの前で使うのであれば音質は十分合格点に達していると思いました。
もちろんプロを唸らせるようなサウンドではないでしょうが、僕のようなアマチュアが家で楽しむ分には十分すぎるシロモノです。
特に気に入ったのが、ディストーションの中の「Dist 1」というフェクト。
説明書によれば、Dist1はBOSSのディストーションペダルDS-1をモデリングしたものです。
DS-1に似ているかはともかく、Dist 1自体がなかなか使える音になっています。
むしろDS-1よりも扱いやすく感じました。
例えば初心者がこのエフェクトを使えば、当面の間は他のディストーションはいらないのでは、と思います。
もちろんエフェクトは他にもたくさんあります。Dist 1がその1つに過ぎないことを考えれば相当コスパのいい製品です。
172種類のエフェクトが使える
ファームウェアVer3.00以降は全部で172種類のエフェクトを使えるようになりました。
エフェクトの種類も一通り揃っており、「ある特定の種類のエフェクトがない」ということはまずならないと思います。
エフェクトの一覧は公式サイトからPDFでダウンロードできます。買う前でもぜひご覧ください。
【外部リンク】ZOOM MS-50G DOWNLOADS
MS-50Gの価格はおよそ9000円弱であり、初心者でも手が出しやすい価格帯だと思います。
そのためなるべく費用を抑えつつ色々なエフェクトに触れる機会を得たい、という初心者の方にはMS-50Gは向いていると思います。
エフェクトは172種類あるのですが、実は全てを同時に使えるわけではありません。
実は本体のメモリの都合上172種類全ては入らないのです。
そのため専用ソフトEffect Managerを使って使いたいエフェクトを選ぶ仕組みになっています。
(Effect Managerを使わなくてもデフォルトの100種類はそのまま使えます)
詳しいやり方は下の記事に紹介しています。
MS-50GでEffect Managerを使う方法購入前の方でも「こういう機能があるのか」と思っていただけるはずなので、興味があればご覧ください。
サイズが小さい
MS-50Gをマルチエフェクターとして見たとき、その小ささはメリットになります。
一般にマルチエフェクター(アンプシミュレータ)というと、とにかくかさばります。
かつて僕はLINE6 POD HD500Xを持っていたのですが、フロアタイプということもあり大きさがデメリットに感じていました。
あまりにも大きいのでエディットのために机に置くと、他に何も置けないくらいです。
(もちろん想定している使い方が違うので単純に比較は出来ませんが)
一方MS-50GはMULTI STOMPの名のとおり、本当にストンプサイズ。
上に書いたようにコンパクトエフェクターとほとんど同じ大きさです。
たくさんのエフェクトを使えることと小さなサイズを両立しているのは、MS-50Gの最大の特徴だと思います。
ZOOM MS-50Gの悪いところ
小さいサイズ、多くのエフェクトという点で優れたZOOM MS-50Gですが、反対にデメリットもあります。
実際に使って気になった点を先に書くと次のとおりです。
- ヘッドホン出力がないため、単体でのヘッドホン練習が出来ない
- リアルタイムにパッチを切り替えるのはほぼ不可能
- 電源スイッチがない
ヘッドホン出力がない
マルチエフェクター、あるいはアンプシミュレータというと大体ヘッドホン出力がついていて、
ギター→マルチ→ヘッドホン
という構成だけでヘッドホン練習ができます。
もちろんそこから聞こえてくるのはアンプやキャビネットをシミュレートした音です。
しかしMS-50Gにはヘッドホン出力がないため、こういった使い方が出来ません。
日本の住宅事情を考えるとヘッドホン練習の需要は多いと思うので、この点は無視できないデメリットになります。
MS-50Gにはモデリングアンプがエフェクトとして実装されており、LINE出力に設定することも出来ます。
ではどうやってこれをヘッドホンで聞くかというと、例えばオーディオ・インタフェースに送ってPCを通じて聞くという方法があります。
実際にこういった使い方をしてみたのですが、オーディオ・インタフェースにつないで、PCを起動して、DAWなども起動して…という作業は単純に面倒くさいです。
これをヘッドホン練習のためにやるのは現実的ではありません。
さらにギターを初めたばかりの方だとオーディオ・インタフェースを持っていないこともあるでしょう。
ところでMS-50GのLINE出力の音は、値段を考えるとそれほど悪くないと思います。
確かにデジタル臭く宅録で積極的に使いたいとは思いませんが、もしこれを直接ヘッドホンから聞けるとしたら、それはユーザーにはありがたい機能だったのは間違いありません。
リアルタイムの操作性は悪い
ボタンの仕様上MS-50Gの操作性は、フロアタイプのマルチエフェクターに比べて大きく劣ります。
ライブなどリアルタイムな操作が求められる場面では、次のことが言えます。
- MS-50Gを1つのエフェクターと見なし、ずっとかけっぱなしにしたり、それだけをON/OFFしたりするのは十分可能
- 足でパッチを素早く確実に切り替え、その中の複数のエフェクトをON/OFFするのは無理
MS-50Gをあたかも1つのコンパクトエフェクターのように使うならライブでも問題ありません。
例えばMS-50Gのあるパッチをブースターだけにしておいて、必要に応じてON/OFFする。MS-50Gのフットスイッチは普通のペダルと変わらないので、これは可能です。
一方、足でパッチを切り替えたり、複数のエフェクトを同時に扱うのには全く向いていません。
パッチの切り替え自体はボタンを1つ押すだけなので、手なら簡単です。
しかしこのボタンは足では絶対操作できないので、リアルタイムにパッチを変えるのはどう考えても現実的ではありません。
またMS-50Gは複数のエフェクトを同時にON/OFFすることが出来ません。
紛らわしいのですが、フットスイッチでON/OFF出来るのは「そのとき画面に表示されているエフェクトだけ」です。
(僕は最初これが理解できておらず混乱しました)
ちなみにMS-50Gのボタンを足で操作できるようにする非公式のアタッチメントがあります。
それはそれでいいのですが、足で操作したかったらそもそもフロアタイプのマルチを買うのが手っ取り早く、操作も確実だと思います。
電源スイッチがない
小さなこととして本体に電源スイッチがないのが気になりました。
MS-50Gの電源をON/OFFする方法は次の2通りあります。
- 電池駆動のとき:入力のシールドを挿したら電源ON、抜いたらOFF
- ACアダプターのとき:アダプターを挿したら電源ON、抜いたらOFF
フットスイッチはエフェクトのON/OFF用なので電源とは関係ありません。
普段パワーサプライ(要はACアダプター)を使う僕としてはこの仕様がちょっとやっかい。
というのも、使うたびにACアダプターを何度も抜き差ししていると端子が緩む気がするからです。
本体にスイッチがあればこの問題を避けられると思いました。
そういうわけで僕は、
「MS-50G用に個別のACアダプターを用意し、スイッチ付きの電源タップを使う」
という方法を取っています。
こうすれば毎度ACアダプターを抜き差しする必要はなく、電源タップの物理的なスイッチで電源を管理できます。
ZOOM MS-50G レビュー まとめ
以上、ZOOM MULTI STOMP MS-50Gのレビューでした。
メリットとデメリットについて深く掘り下げたので、ご自身の使い方に合うかどうかの参考になればと思います。
レビュー全体をまとめると、
- アマチュアがアンプの前で使うなら音質は十分
- エフェクト数は172種類あり、初心者が色々なエフェクトに触れてみるのに最適
- LINEの音もそこまで悪くないが、単体でのヘッドホン練習できない
- リアルタイムの操作性が悪いので、使う場面を選ぶ
という内容でした。
全ての機能や操作についてはもちろん書ききれません。
しかし重要なポイントと向く人・向かない人については網羅できたと思います。
僕はこれまで初心者の1台目のエフェクターにはBOSS Blues Driver BD-2を推してきたのですが、MS-50Gも有力な選択肢だと思います。
操作に慣れるのは大変なものの、9000円という価格はBD-2と大差ありませんし、たくさんのエフェクトを使えるという意味でコスパは高いです。
もちろん既に色々なエフェクターを経験してきた方でも相当遊べます。
もしコンパクトのサイズにこだわらないのであれば、今ならZOOM G1X FOURもおすすめです。
気になった方はぜひチェックしてみてください。
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