今回はマルチエフェクター「BOSS GT-1」のレビューです。
実際に使って感じたメリット・デメリットから書くと次のとおり。
- アンプの前で使うととても使いやすい音が出せる。値段以上の価値あり。
- 空間系の広がりは特にクオリティが高い
- 2万円というリーズナブルな価格帯
- ラインの音は普通
- 本体での操作はやや面倒くさい
一番重要なポイントは、GT-1はアンプの前で使うものだということです。
歪みは扱いやすい音が簡単に出せて、空間系の広がりも豊かです。
2万円でこれだけの音が出せるなら文句のつけようがありません。
予算2万円で、アンプの前で使うのが主な目的であれば、GT-1は間違いない選択肢だと思います。
一方で、GT-1のライン(ヘッドホン)の音は可もなく不可もなくでした。
リアル感はあまりなく、同価格帯のMOOER GE150に劣る印象です。ラインの音はあくまでおまけと考えた方がいいと思います。
以下、GT-1について詳しくレビューしていきます。
購入を検討している方はぜひご覧ください。
ものすごく長い記事なので、目次と上に戻る機能を活用していただければと思います。
BOSS GT-1の基本情報
GT-1はBOSS(ボス)が開発するマルチエフェクターであるGTシリーズの1つです。
GEシリーズには他に、
といった製品があります。
GEシリーズの中でもGT-1は機能を絞り、2万円前後というリーズナブルな価格になっています。
上位機種よりも価格が抑えられているため、ギターを始めて間もない方でも手が出しやすい一台です。
付属品
まずはGT-1を購入して付いてくるものからチェックしていきます。
こちらがGT-1本体です。
これからじっくりレビューします。
他には書類が一式。
GT-1を電池駆動させるための単3電池も4つ入っています。
GT-1の箱はこちら。
大きさと重さ
GT-1はフロア型にしては小さい方で、サイズは以下のとおりです。
幅30cm×奥行15cm×高さ5.6cm~7.5cm
高さは右側のエクスプレッションペダルの位置によっておよそ5.6~7.5cmまで変わります。
奥行き15cmというのは、同じくBOSSのコンパクトエフェクターより数cm長いくらいです。
重さはおよそ1.1kg。
ペットボトル2本分くらいですが、大きさがそれほどでもないので重くは感じませんでした。
片手でも余裕で持てます。
リュックサックくらいの容量があれば問題なく入れられるサイズでもあるので、外への持ち運びには苦労しないはずです。
素材と質感
写真だと分かりにくいですが表面の黒いプレートは金属です。
ボタンもマットな感じに仕上がっています。
マルチエフェクターで2万円というと高価な方ではありませんが、安っぽい感じはしませんでした。
一方、下の青い部分は樹脂です
電池を入れるスロットはここにあります。
頑丈なラバー足がついているので、シールドの張力がかかっても動きづらくなっています。
BOSS GT-1のコントロールとディスプレイ
BOSS GT-1にはディスプレイが1つついており、ここでエフェクトの情報を確認できます。
サイズは横5.5cm×縦1.9cm。
このディスプレイはモノクロで画素も細かくはありません。
それでも必要な情報は読み取れますし、ディスプレイが小さい分本体も小さくなっていると思えばそれほど悪いものではありません。
画面の明るさ(コントラスト)は設定画面から調整できます。
デフォルトだとかなり明るくて、暗い部屋だとものすごく眩しく感じました。よって光度は十分です。
ディスプレイに加えて、GT-1には次のツマミやボタン等があります。
- ツマミ×3
- ボタン×12
- フットスイッチ×3
- エクスプレッション・ペダル×1
ボタンが12個というと多く感じますが、それぞれ役割が明確に決まっています。
そのため操作に慣れてしまえば混乱することはありません。
これらのボタンはマットな質感になっていて、地味ながら高級感があります。
一方、3つのフットスイッチは不思議な作りになっています。
GT-1に特有の不思議な踏み心地で、ちょっと押し込むだけで反応します。
素材もプラスティックなので、GT-1のデザインの中でなぜかフットスイッチだけ悪い意味で目立っているように感じました。
フットスイッチもZOOM MS-50GやMOOER GE150のように金属製にすれば、見栄え上もっと良くなっていたと思います。
【ZOOM MS-50Gレビュー】ペダルサイズのマルチエフェクター入出力
続いて、GT-1の入出力を見ていきます。
入出力は全て上側面にあり、右から次のとおりです。
- 電源
- USB(PCとの接続)
- 外部のコントローラー接続
- ライン出力×2(左右)
- ヘッドホン出力
- AUX IN
- ギター入力(電源ONを兼ねる)
1つずつ見ていきましょう。
DC IN
まず電源は上でも触れたとおり、PSA-100シリーズを使います。
このACアダプターはGT-1には付属していないため、別途用意しましょう。
ちなみに、僕が持っているMAXON PD01という古いパワーサプライでも動作することを確認しました。積極的におすすめも保証もしませんが、パワーサプライでも一応使えるという認識で差し支えないと思います。
GT-1は電源を挿しただけでは起動せず、左端の「INPUT」にシールドを挿して初めて起動します。
電源スイッチのようなものはありません。
USB COMPUTER
GT-1をPCとつなぐと、PCと音のやり取りをしたり、エフェクト編集ソフトを使ったりできます。
このときに使うのがUSB端子です。
TYPE-A(オス)⇔TYPE-B(オス)のUSBケーブルを使います。
このケーブルもGT-1に付属していないので、別に用意する必要があります。
CTL 2.3/EXP2
外部のフットスイッチやエクスプレッションペダルも使えます。
これはGT-1の拡張機能の1つです。
OUTPUT
L・Rのライン出力「OUTPUT」は、アンプやミキサーに接続するのに使います。
1台のアンプに接続するという普通の使い方の場合はモノラル信号(左右に分離していない1つの信号)で十分です。
この場合は「L/MONO」を使いましょう。
PHONES
「PHONES」はヘッドホン出力です。
ヘッドホン練習がしたいときは、ここにヘッドホンをつなぎます。
ジャックの形状がステレオミニサイズなのが個人的に気になりました。
多くのヘッドホンのプラグは標準サイズなので、GT-1に挿すにはサイズ変換のアダプタが必要です。
AUX IN
AUX INにスマホなどをつなぐと音楽を鳴らしながら練習ができます。
AUX INの詳しい使い方については、下の記事をあわせてご覧ください。
マルチエフェクターでAUX INを使う方法【曲とあわせて練習する】BOSS GT-1のエフェクトと音質
ここからはBOSS GT-1にとって肝心のエフェクトと音質面について書いていきます。
実際の仕様を紹介した上で、僕なりの感想を書きたいと思います。
エフェクトのタイプと種類
GT-1の何をエフェクトの種類と呼び、何をパラメータと呼ぶかは少し曖昧です。
しかし少なく見積もっても次の数だけエフェクトが用意されていると言えます。
エフェクト | 数 |
FX | 23 |
PEDAL FX | 7 |
OD/DS | 22 |
PREAMP | 27 |
NS | 1 |
DELAY | 7 |
REVERB | 8 |
エフェクトの分類について
「FX」はコンプやEQ、アコースティックシミュレータ、モジュレーションなどがごちゃまぜになったカテゴリです。
全く違うタイプのエフェクトが合わせて23種類あります。
上記のエフェクトの中でFXだけは2回使えるようになっています。
「PEDAL FX」はエクスプレッションペダルと連動するワウ系のエフェクトです。
「OD/DS」はその名のとおり歪み系のエフェクトです。
ブースターの類もここに含まれます。
実際のエフェクターをモデリングしたものが多いです。
「PREAMP」も文字通りプリアンプに相当するエフェクトで、音作りのメインになります。
音をゼロから作っていく場合、まずはPREAMPの吟味から始めるといいでしょう。
ここでも実在するアンプをモデリングしたものが多数揃っており、楽しめるポイントの1つです。
「NS」はノイズゲートに相当するエフェクトです。
細かいタイプの選択はありませんが、他のタイプと同列に扱われます。
「DELAY」と「REVERB」は文字通り「ディレイ」、「リバーブ」を表す空間系エフェクトです。
音質についての感想
GT-1の音質を語るには、ライン(ヘッドホン)出力の場合なのか、アンプの前で使う場合なのかを明確に区別する必要があります。
結論から書くと、ラインの音はそこそこですが、アンプの前での使いやすさは素晴らしいと感じました。
2つの場合に分けて感想を書きたいと思います。
ライン・ヘッドホン出力の音
まずはラインの音について。
これは本体のPHONES(ヘッドホン出力)を使ったり、USB端子を通じてPCに音声を送ったりした場合の音を指します。
GT-1の場合、ラインの音は普通です。
特別感動もなければ、使えないとガッカリすることもありません。
言ってしまえば可もなく不可もなくというところです。
歪みの音ではGT-1特有の粘つきが感じられました。
これはリアルでこそないものの、ピッキングの粗(あら)を良くも悪くも覆い隠してくれます。
ちなみに、かつて僕は同じくBOSSの「ME-25」というマルチエフェクターも使っていました。
ME-25が相当古い製品ということもありますが、それと比べるとラインの音は明らかに良くなっています。
GT-1のラインの音を使う際に、次の点に注意すべきです。
- 「OUTPUT」パラメータを必ず「LINE/PHONES」に設定
- プリセットはアンプの前で使う用と割り切る
まず、GT-1には音の出し方に合わせて設定する「OUTPUT」というパラメータがあります。
これはGT-1をどんなアンプの前で使うのか、あるいはラインで音を出すのかを決める重要な項目です。
特にラインの場合は、ここを正しく設定しないとまともな音が出ません。
「MENU」ボタンから簡単に設定できるので、必ず設定しておきましょう。
2つ目に、元から入っているパッチ(プリセット)は基本的にアンプの前で使うものだと思った方がいいです。
上記の「OUTPUT」をライン用に設定しても、プリセットだとどうしても納得の行く音が得られませんでした。
そのためラインで音を出したいのであれば、あくまでライン用に音作りを抜本的に見直すのをおすすめします。
逆に言うと、ライン用に作り込んでいけばそこそこの音質にはなります。
アンプの前で使う場合の音
ラインの音が可もなく不可もなくだったのに対し、アンプの前で使ったときの音は素晴らしいです。
アンプの前で使うというのは、GT-1のOUTPUT端子からアンプのINPUTやRETURNに挿す場合を指します。
GT-1は2万円というマルチにしては抑えめな価格ですが、それでここまでの音が出せるなら120点です。
特に次の点で優れていると思いました。
- 歪みが使いやすい
- 空間系の広がりが豊か
GT-1の場合、歪みは「OD/DS」から「PREAMP」のカテゴリで作ることになります。
いずれしても非常に使いやすい傾向の音が得られました。
確かにコンパクトエフェクターと比べると、主張が弱い(没個性)感はややあります。
それでも2万円のマルチに入っている大量のエフェクトの1つと考えると十分すぎる音質です。
そして空間系の広がりも使っていて特に気に入ったポイントでした。
DELAYやREVERBもマルチでこれなら文句なしのクオリティを実現できています。
狭い部屋の小さめのアンプですらそれを実感できました。
本体での音作り
本体での音作りのしさすさについてもここで書いておきます。
結論から言うと、最初は面倒くささを感じるものの、慣れれば本体でも基本的な音作りはサクサクできるようになると思います。
僕はこれまで何台かのマルチエフェクターやシミュレータ系のソフトを使ってきました。
そのためこの手の機材で何が出来るのかは、説明書を読まなくてもなんとなく分かります。
適当にツマミやボタンをいじっていれば、何がどうなるのかはそのうち把握できました。
その点、マルチエフェクターを全く触ったことがない方だと、慣れるまでに少々時間がかかるかもしれません。
とはいっても誰しもマルチエフェクターを最初から使いこなせる人はいないので、苦戦しながらも慣れていくしかないと思います。
普段からIT機器を使いこなしている方であれば、GT-1も間違いなく使いこなせるはずです。
音作りの手段は本体だけでなく、次に紹介する「TONE STUDIO」というソフトもあります。
BOSS GT-1のソフトウェア
続いてはBOSS GT-1周りのソフトウェアについてご紹介します。
エフェクト編集ソフトTONE STUDIO
GT-1にはエフェクトをPC上で編集するためのソフトである「TONE STUDIO」が用意されています。
こちらがそのホーム画面です。
もちろんGT-1の本体だけでも音作りが出来ますが、主に画面が小さいせいで面倒かつ直感的でないのは否めません。
TONE STUDIOなら各パッチ、エフェクト、パラメータを簡単に確認・編集できるので、本体に比べて圧倒的に便利です。
PCが使える環境でじっくり音作りするのであれば、TONE STUDIOを使わない手はありません。
もちろんこのソフトは無料です。
ネットから各自のPCにダウンロード&インストールして使います。
Windows10でのインストール方法と基本的な使い方を下の記事にまとめました。あわせてご覧ください。
BOSS GT-1でエフェクト編集ソフトTONE STUDIOを使う方法ASIO対応ドライバー
GT-1をPCにつないで使うには専用ドライバーのインストールが必要です。
ドライバーを用意すると、
- オーディオインターフェースとして音のやり取りをする
- 上記のTONE STUDIOを使う
といったことが可能になります。
これらの機能を使いたい場合、まずはドライバーの導入から始めましょう。
例えばWindows10であれば、ネットに繋がったPCに接続しただけでドライバーが自動的にインストールされます。
下の記事にはWin10の場合を詳しくまとめてあります。こちらもあわせてご覧ください。
BOSS GT-1のドライバーをインストールする方法【Windows10の場合】GT-1のドライバーは低遅延の通信ができる規格「ASIO」に対応しています。
つまり、GT-1を直接PCに接続しても、明らかな音の遅れはないものと思って差し支えありません。
BOSS GT-1 その他の感想
ここまででBOSS GT-1の主な機能や音質面の感想について書いてきました。
ここからは、そこでは拾いきれなかった細かい要素について紹介し、僕なりの感想も書こうと思います。
チューナーは他に用意したほうがいい
GT-1の左と真ん中のフットスイッチを踏み込むとチューナーが使えます。
正直なところ、これはあまり使い勝手が良くありませんでした。
音程が合わないということはないのですが、僕が普段使っている、
と比べると、反応と使いやすさの点で明らかに劣ります。
そのためチューナーはあくまでマルチエフェクターの機能の1つに過ぎないと割り切り、おまけとして考えた方がいいでしょう。
クリップ式など、別なチューナーを用意する方が快適だと思います。
クリップチューナーのおすすめ【初心者用から高精度モデルまで】詳しいマニュアルが書かれたPDFについて
GT-1には取扱説明書が付属していますが、そこに書かれている情報は最小限のものです。
もっと詳しい使い方やエフェクトの種類、パラメータの説明などは、別途DLするPDFファイルに書かれています。
下のリンクからDL可能です。
【リンク】BOSS GT-1 取扱説明書
GT-1のレビューの中には、これが不親切だという声も散見されました。
確かに一理あると思います。
たしかにPDFの内容がそのまま印刷されて付属していれば、その方が便利なのは間違いありません。
ではなぜそうなっていないのかというと、コストの問題だと思います。
GT-1の取扱説明書は、日本語を含むいくつかの言語で書かれています。
こうすることで、全く同じパッケージで色んな国に輸出できるわけです。
PDFの内容は合計で数10ページに及ぶので、もしこれを全ての言語で印刷するとしたらかなりの量になるでしょう。それは無駄が多いですし、その分箱が大きくなったらコストも大きくなります。
反対に、言語によってパッケージの内容を変えてしまうと、それにもまたコストがかかります。
つまり、別途PDFファイルをダウンロードする仕様は、2万円という値段を実現するのに必要だったのだろうと僕は考えました。
INPUTが電源を兼ねる仕様について
GT-1はギターシールドの抜き差しで電源もON・OFFする仕様になっています。
これは前半で書いたとおりです。
使い始めた当初、この仕様は扱いづらい印象を受けました。
別に電源スイッチを本体に用意してくれた方が直感的だと思ったからです。
しかしいざGT-1を使い続けてみると、案外この仕様でも何も困りません。
シールドが間違って抜けてしまうことはまずないので、電源も同じく間違ってOFFになることもないのがメリットです。
BOSS GT-1 まとめ:アンプの前で使うのがおすすめ
以上、マルチエフェクター「BOSS GT-1」のレビューでした。
まとめると、実際に使って感じたメリット・デメリットは次のとおりです。
- アンプの前で使うととても使いやすい音が出せる。値段以上の価値あり。
- 空間系の広がりは特にクオリティが高い
- 2万円というリーズナブルな価格帯
- ラインの音は普通
- 本体での操作はやや面倒くさい
GT-1の最大の特徴は、実アンプとの相性の良さです。
アンプのINPUTやRETURNに接続することで真価を発揮すると感じました。
特に空間系のエフェクトのかかり方はキレイです。
ラインの音質はまずまずなので、GT-1はあくまでアンプの前で使うものと考えるのをおすすめします。
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