今回はクリップチューナー「YAMAHA YTC5」のレビューです。
先に要点を挙げると次のとおり。
- 安い(1,000円)
- 横表示のメーターが直感的
- 精度は高くない
- ギターヘッドの表に取りつけると上下が逆さまになる
総合すると1,000円という値段を考えれば性能自体は悪くありません。
シンプルで使いやすく、音への追従性も高いです。
問題なのは画面の向きで、ヘッドの表に取りつけると上下逆になってしまうのが難点。
この仕様がやっかいなため、積極的にはおすすめできないというのが正直なところです。
以下、TC5の特徴について詳しく紹介します。
YAMAHA YTC5の基本仕様
まずはYAMAHA YTC5の基本的な作りから見ていきましょう。
YTC5は大きく分けると画面とクリップ部の2つから成り立っています。
画面のサイズは次のとおり。
全体:幅5.4cm×縦3.0cm
画面のみ:幅3.6cm×1.9cm
画面のサイズ自体は他のクリップチューナーと比べても同じくらいですが、ペダル型チューナーのように横向きになっているのは直感的に見やすいです。
画面の内容と操作については後述。
クリップには2つの可動部があります。
それぞれ180度、360度ずつ回転。
可動部が2ヶ所あることで角度調整の柔軟性は高いです。
注意点としては、可動部ではないところを無理やり動かさないようにしましょう。
楽器に取りつける前にどういう仕様になっているかしっかり確認しておくのをおすすめします。
重さは電池込みで28g。
エレキギターの標準的な重さを3.5kgと考えれば、28gは誤差の範囲です。
ヘッドに取りつけても重さは全くと言っていいほど変わりません。
操作できる部分は背面のボタン1つのみ。
ボタンはシリコン製です。
操作箇所が少ない分機能も少ないのですが、裏を返せばシンプルで使いやすいとも言えます。
画面・クリップ部は主にプラスティック製。
あまり金属製のクリップチューナーと比べると堅牢性では劣るものの、普通に使う分には壊れる雰囲気はありません。
クリップの挟む部分はシリコン、あるいはラバー系の素材でできています。
ラッカー塗装のギターに一時的にとりつけても問題ないことを確認しました。
ですが使っていないときに長時間付けっぱなしにはしないのが無難です。
これはクリップチューナー全般に言えることで、ラッカー以外でも跡が残る可能性があります。
YAMAHA YTC5の機能
YAMAHA YTC5の基本的な仕様を確認したところで、次は機能・操作面について紹介します。
電源と4つのモード
背面のボタンを2秒長押しすると電源がONになり、ONの状態で2秒長押しすると電源がOFFになります。
電源ONの状態では、このボタンは次の4つのモードの切替にも使います。
- CHROMA
- GUITAR
- BASS
- UKULELE
ボタンを繰り返し押すとこれらのモードに順番に切り替わります。
1つ不満なのは選んだモードが保存されないこと。
例えばGUITARモードを選んだ状態で電源をOFF→ONとすると、またデフォルトであるCHROMAに戻ってしまいます。
ここは電源を切っても保存される仕様だったらなお便利でした。
実際のところ、1つ目のCHROMAモードだけでも特に問題なくチューニングできるので特に不便には感じていません。
CHROMAモード
1つ目のCHROMAはクロマチックの略で、一番近い音のアルファベットを表示します。
他のモードはレギュラーチューニングを想定しているため、変則的なチューニングをする場合はCHROMAモードが向いています。
GUITARとUKULELEはその名のとおり、それぞれギターとウクレレ用のモードです。
このモードの場合は検知した音に近い「弦の番号」を表示します。
例えばAに近い音を検知したら、弦の番号である5が表示されます。
残るBASSはベース用のモード。
BASSモードでもGUITARモードと同じく音に近い弦の番号を表示します。
BASSの場合はさらに5弦・6弦ベースを想定してLowBとHiC表示も用意。
(5,6弦ベースを持っていないため未検証)
電池
YTC5はボタン電池1つで駆動します。
背面のフタを開けると電池の出し入れが可能。
フタは硬貨などを使わないと開けられないのがちょっと不便。
なかなか開け締めする機会がない部分とはいえ、指でも開けられる仕様だったらもっと使いやすかったと思います。
使うボタン電池は「CR2032型」です。
これはYTC5に限ったことではなく、クリップチューナーは大体この型を使います。
電池持ちはというと、使用上は最大25時間連続で使用できることになっています。
連続で使用することはないため、実際の持ちはそこまで長くなりません。
ただYTC5に限らないことですが、クリップチューナーの電池は相当長い間持つものだと考えて大丈夫です。
YTC5にはオートパワーオフ機能があるため、電源をONにしてから7分後に自動的にOFFになります。
この機能のおかげで「うっかり電源を消し忘れて電池を無駄に消耗する」ということがありません。
基準音の周波数は440Hzのみ
YTC5の基準音は440Hzで固定です。
チューニングで基準となるAの音は440Hzが一般的です。
例えば普通にエレキギターを趣味として楽しむ場合、440Hz以外を使うことはまずありません。
ところが楽器の種類や地域によっては440Hz以外を使うこともあります。
これからYTC5を買おうかと考えている方は、ご自身にどの基準音が必要か確認してみてください。
もし440Hz以外も必要なら、YTC5ではなく基準音を調整できるタイプのチューナーをおすすめします。
例えばtc electronicの高精度クリップチューナーUNITUNE CLIPは435~445Hzに1Hz刻みで調整ができます。
【UNITUNE CLIP レビュー】高精度クリップチューナーの決定版YAMAHA YTC5の取り付けと角度調整
続いてはYAMAHA YTC5の取り付けと角度の調整について見ていきます。
取りつける向きについて
クリップチューナーを取り付ける場合、画面をヘッドの表側に向けるのが一般的です。
ところがYTC5を表向きに取りつけると、画面が上下逆さまになってしまいます。
これはクリップの調整の問題ではなく、画面の作りの問題です。
もし画面の上下を修正しようとすると、今度は画面が見づらくなってしまいます。
前から覗き込む必要があるため、この取り付け方法は実用的とは言えません。
ではどうするかというと、ヘッドの裏に取りつけることで上下を合わせられます。
表向きほど一般的ではありませんが、このように裏向きにする方法もなくはありません。
ただし、裏向きだとペグを回す手が邪魔になって画面が見づらいのがデメリットです。
やはりクリップチューナーは表向きに取りつけるのが無難でしょう。
逆に考えると、左利き用のギターでは表向きでも見やすく取りつけられることになります。
少数かとは思いますが、左利き用のギターやベースをお持ちの方はこのデメリットについて考える必要はありません。
取りつけた際の様子と安定性
クリップで挟んだ際の安定性については問題ありません。
以下のギターやベースで確認しました。
ストラトキャスタータイプ
レスポールタイプ
テレキャスタータイプ
Ibanez共通の尖ったヘッド
PRS共通の狭いヘッド
エレキベースやアコースティックギター
YAMAHA YTC5の精度
チューナーの肝である精度と反応については、次のことが言えます。
- 鳴らした音への反応は良い
- 高精度のチューナーと比べると精度は明らかに劣る
音への反応は良い
まずYTC5は鳴らした音へしっかり反応します。
倍音を拾ってしまったり、メーターがフラフラすることもありません。
音が合うと画面全体が緑色に光るため、音程があったことを簡単に把握できます。
精度は高くない
一方あからじめ認識しておきたいのは、精度がそこまで高くないという点です。
取扱説明書によるとYTC5の精度は±0.5セント。
他のクリップチューナーの場合、例えばUNITUNE CLIPの精度は公表値で±0.02セントとなっています。
これら2つを同時に使ったとき、「YTC5では合っているのに、UNITUNE CLIPではまだ合っていない」という場合が多々ありました。
つまりYTC5は高精度なチューナーほど微小な音のズレには対応できません。
よって次のような場合にYTC5でチューニングするのはおすすめしません。
- 大事なライブで演奏する
- 人に聞かせる前提で録音する
- オクターブチューニングをする
YAMAHA YTC5レビュー まとめ
以上、クリップチューナー「YAMAHA YTC5」のレビューでした。
まとめると、YTC5を実際に使っていて感じたメリットは次のとおりです。
- 横表示のメーカーそのものは直感的
- 音程が合ったとき緑に光って見やすい
- 安い(1,000円)
高精度なチューナーと比べると精度は甘いものの、ちょっと爪弾く程度の普段使いなら問題ありません。
音への追従性も良好です。
ただし画面の向きが問題で、画面を表に向けたい方にはおすすめできません。
画面の上下を揃える場合、ヘッドの裏に取りつけることになります。
この仕様だけは注意してください。
表向きでも見やすいクリップチューナーはいくらでもあるので、正直に書くとYTC5の存在価値は微妙です。
クリップチューナーをお探しの方の参考になればと思います。
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