今回は、マルチエフェクター「VOX StompLab SL2G」のレビューです。
このマルチエフェクターの特徴はおよそ5000円という安さで、ZOOM G1シリーズやMS-50Gをも下回ります。
1万円~の機種にはやはり音質や機能で劣るものの、ちょっとした遊びとして使う分には十分なレベルです。
とにかく低予算でマルチエフェクターを使ってみたいという方は、ぜひチェックしてみてください。
StompLab SL2Gの基本情報
まずはこの「StompLab SL2G」という製品について、基本的な部分から見ていきます。
本機はアンプで有名なVOXが送るマルチエフェクターで、兄弟機としてペダルがない「StompLab SL1G」もあります。
値段の目安としては、ペダルありのSL2Gが5,000~6,000円、ペダルなしのSL1Gが4,500円くらいです。
(ショップや時期によって変動あり)
以下では今回レビューする「StompLab SL2G」を簡単に「StompLab」と書くことにします。
StompLabが発売されたのは2012年であり、このレビューの初稿を書いている2020年1月現在までに既に8年もの月日が経っています。
しかし、詳しくは後で書くとおりStompLabは軽く弾く程度の使い方なら今でも十分なクオリティです。
新しいマルチエフェクターに比べると見劣りしますが、これほど安い製品は他にありません。
よってStompLabは入れ替わりの早いデジタル製品にも関わらず、未だに存在価値があります。
付属品
StompLabの付属品は次のとおりです。
- StompLab SL2G本体
- 取扱説明書
- 単3電池×4本
こちらがStompLab本体です。
取扱説明書には日本語の記載もあります。
他のマルチエフェクターに慣れていたとしても、StompLabは説明書を見ないと操作を理解するのは難しいです。
実際に説明書を見ながら触ってみたところ、本機でやれることの説明は全て網羅されていました。
時間はかかるかもしれませんが、じっくり読み込めば使いこなせるようになります。
StompLabは電池だけでも駆動でき、そのための電池もついています。
ちなみに箱はこちら。
サイズと重さ
StompLabの寸法は次のとおり。
幅20.7cm×幅12.5cm×高さ6.4~7.8cm
高さはエクスプレッションペダルの位置によって6.4~7.8cmと変わります。
重さは電池なしで761g。
StompLabのボディは硬い金属製なため、見た目以上にずっしりしています。
非常に低価格なマルチエフェクターではありますが、メタルボディのおかげで安っぽい感じはしません。
ツマミはプラスティックですが、壊れそうな印象もありませんでした。
ただ、真ん中と右のツマミは引っ張ると外れるため、なくさないように注意が必要です。
ここは外れない仕様だった方がいいと思いました。
StompLab SL2Gのハードウェアの仕様
ここからはStompLabのハードウェア面をチェックしていきます。
背面の入出力・電源
まず背面には入出力と電源があります。
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- INPUT
- OUTPUT/PHONES
- 電源スイッチ
- DC 9V
INPUTはギターから伸びるシールドを挿す端子です。特に書くことはありません。
OUTPUT/PHONES端子は、アンプだけでなくヘッドホンやミキサーなどにも接続できます。
ヘッドホン(ライン)用の音作りも出来るので、これとヘッドホンだけで静かに練習することも可能です。
アンプとヘッドホン(ライン)では、音作りのパラメータを正しく設定する必要があります。
「GLOBAL」カテゴリの「OUTPUT SEL」を、アンプと接続するならA1~A3のどれかに、ヘッドホン類なら「Ln」に設定しましょう。
こうすることで、それぞれの場合に適切なサウンドが得られます。
マルチエフェクターとしては珍しく、StompLabには電源スイッチがあります。
1秒間長押しでON・OFFできます。
他のマルチエフェクターだと電源ケーブルやINPUTのシールドで電源をON・OFFすることが多いです。
StompLabの場合、ケーブルの抜き差しなしで電源を管理できるのは便利だと思いました。
1秒長押ししないと反応しないので、間違って電源を切ってしまうようなことも起こりづらいです。
電源用のACアダプターは「KORG KA181」が推奨されています。
僕はBOSS PSA-100を使っており、こちらでも問題なく動作しました。
この手の9V電源用ACアダプターは基本的に使えるものと思っていいでしょう。
KORG以外のACアダプターやパワーサプライを既に持っている方は、新しく買う必要はありません。
パネルのコントロール
StompLabの操作できる部分は次のとおりです。
- ツマミ×3
- ボタン×4
- LED×5
- フットスイッチ×2
- エクスプレッションペダル×1
加えて、パラメータ確認用のディスプレイが1つついています。
このディスプレイは小さいだけでなく、表示できるのはデジタル数字と簡略化したアルファベットだけです。
流石にこのディスプレイだけだと使いづらそうに思えて、最初は混乱しました。
しかし実際のところ、左のツマミのおかげで意外と困りません。
簡単に書くと、左のCATEGORYツマミは「今編集しているエフェクト」や「プリセットのジャンル」を表しています。
これとディスプレイを確認することで、マルチエフェクターとしては十分な情報が分かる仕組みです。
StompLab SL2Gのエフェクトと音質
マルチエフェクターであるStompLabは、8つのカテゴリに合計104種類のエフェクトを内蔵しています。
カテゴリ名 | エフェクト数 |
PEDAL | 8 |
AMP/DRIVE | 62 |
CABINET | 12 |
MODULATION | 9 |
DELAY | 8 |
REVERB | 3 |
NOISE REDUCTION | 1 |
GLOBAL | 1 |
計 | 104 |
それぞれのエフェクトは、パラメータを変えることでさらに細かく調整できます。
上の表を見てもらえば分かる通り、割合としてはモデリングアンプとドライブが大半です。
他のエフェクトはマルチエフェクターとして必要最小限ではありますが、一通り揃っています。
問題なのは、ディスプレイの表示だけだとそれが何のエフェクトか分かりにくい(分からない)ことです。
音の変化は分かりますが、具体的なモデル名などは説明書の一覧と照らし合わせて初めて分かります。
ここはディスプレイの情報量が少ないデメリットだと感じました。
パッチについて
パッチ(エフェクトを編集して組み合わせたもの)はプリセット、ユーザーセット合わせて120個保存できます。
- プリセット:計100個。変更できない。
- ユーザーセット:計20個。変更できる。
プリセットだけでも色々な音色が100個用意されているので、まずはこれらをざっと触ってみるといいでしょう。
クリーンから深い歪みまでいくつもあり、モジュレーションを使った飛び道具系のサウンドもあります。
個人的に使ってみた印象では、下手に自分で作るよりもプリセットから選んだ方が手っ取り早く感じました。
もちろん自分でも0から音作りができて、オリジナルのパッチは20個まで保存できます。
普通に使っている分には20スロットあれば足りるでしょう。
音質について
肝心の音質について一言で書くと、デジタルではあるものの、遊ぶには十分というレベルです。
値段が値段なので、流石にリアルなサウンドは期待できず、価格が上のマルチエフェクターと比べても見劣りはします。
デジタルものとして高品質なサウンドを期待していたり、本腰を入れて録音がしたかったりする場合、StompLabは向きません。
かといっておもちゃレベルの音質なのかと言うとそうでもなく、アマチュアが気軽に触る分には上出来です。
音作りについて書くと、StompLabではエフェクトの順序が固定されています。
上の表の順番のとおり、PEDAL→AMP/DRIVE…という順序で、それぞれのエフェクトは1回ずつしか使えません。
それでも作れる音のバリエーションは十分なので、順序固定という特徴は特に問題にならないはずです。
StompLab SL2Gの機能
続いて、StompLabの細かい機能面についても紹介します。
電池駆動
電池は裏面をドライバーで開けると入れられます。
取扱説明書には、アルカリ電池で7.5時間使えると書かれています。
もし電池メインで長く使い続けるなら、エネループなど繰り返し使える充電池がおすすめです。
チューナー
StompLabにはチューナー機能もついています。
チューナーを使うには、次の方法でバイパスかミュートモードにします。
- バイパス:フットスイッチ2つを一瞬だけ同時押し
- ミュート:フットスイッチを1秒間同時押し
するとディスプレイが音程を、左右のLEDが音程のズレを表すようになります。
音程が合うと真ん中のLEDだけが緑に点灯します。
使い心地としては可もなく不可もなく、ふつうに使えます。
上下にゆれすぎてストレスが溜まることもないので、マルチエフェクターのチューナーとしては十分です。
PCとの連携はない
マルチエフェクターにはPCと接続して何らかの形で使える製品が多いです。
しかしStompLabにはPCと連携する機能は全くありません。
(そのための端子もない)
具体的に書くと、次のような機能はStompLabにはありません。
- オーディオインターフェースとしての機能
- PC上での音作り
- ファームウェア更新
まずStompLab自体にはオーディオインターフェースの機能はないので、PCと直に接続して録音する、という使い方は出来ません。
録音がしたい場合は別にオーディオインターフェースを用意して、それを通じてPCに音を送る必要があります。
マルチエフェクターにはPCに上で簡単に音作りが出来る製品がありますが、StompLabにはそれもありません。
音作りは本体でのみ行います。
低価格な製品なので、PCとの連携ができないのは仕方ないところです。
StompLab SL2G まとめ
以上、マルチエフェクター「VOX StompLab SL2G」のレビューでした。
繰り返し書いてきたように、この製品はとにかく低予算でマルチエフェクターを使いたい方におすすめです。
軽い趣味としてマルチエフェクターを使うなら、必ずしも何万円もする製品は必要ありません。
StompLabはマルチエフェクターとして最低限の音質と操作性を持っているので、実用性は十分です。
今回レビューしたのはペダルありの「SL2G」ですが、ペダルなしの「SL1G」でも音質は変わらず値段は少し安くなります。
ペダルは不要という方はこちらもチェックしてみてください。
ただ、StompLabが発売された2012年からは長い時間が経ちました。
今であれば多少値段は高くなりますが「ZOOM G1/G1X FOUR」シリーズも比較検討した方がいいと思います。
(およそ8,000~10,000円)
個人的にはこちらの方が音質ではだいぶ優れていると感じますし、PC上のエディタが使えるのも便利です。
総合的なコストパフォーマンスでは、G1/G1X FOURシリーズに軍配が上がります。
予算に余裕がある方はこちらもチェックしてみてください。
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