この記事では、エレキギターの機材の1つであるマルチエフェクターについて解説します。
マルチエフェクターの特徴は、大きく分けると次の2つです。
- たくさんのエフェクトが使える
- アンプシミュレータとしてヘッドホン練習や録音にも使える
詳しいことはこれから解説していきます。
次のような方はぜひご覧ください。
- マルチエフェクターを使ったことがない方
- 自宅でアンプが使えず、ヘッドホンで練習したい方
- ギターの録音に興味がある方
「そもそもエフェクターって何」という方は、こちらの記事をあわせてご覧ください。
エフェクターとは何か:エレキギターの音を加工する機材エフェクトがたくさん入っている
マルチエフェクター(以下、マルチ)の1つ目の特徴は、その名のとおりエフェクトがたくさん入っていることです。
ほとんどの製品は、このような平べったい形をしています。
(写真:MOOER GE150)
対して、1つのエフェクトに特化したエフェクターをコンパクトエフェクター(以下、コンパクト)と呼びます。
コンパクトと比べると、マルチには次のようなメリットがあります。
- エフェクトの数が多い
- コンパクトをたくさん買うよりも安く済む
- 電源が1つで済む
一方で、次のようなデメリットもあります。
- 個々のエフェクトの質はコンパクトに劣る
- 単価が高い
- 操作が複雑
たくさんのエフェクトを安く使える
エフェクターといってもたくさんの種類があります。
音を歪ませるディストーション、残響を作り出すリバーブ、ジェットエンジンのような音を出すフランジャー。
もしもこれらを全てコンパクトで揃えようとすると、かなりの費用がかかってしまいます。少しずつ揃えていくならまだしも、いっぺんに買うのは現実的ではありません。
この問題を解決する方法の1つがマルチです。
マルチはそれ自体の値段は決して安くはないものの、エフェクトごとにコンパクトを揃えるよりは圧倒的に安く済みます。
しかし、それぞれのエフェクトの質を比べるとコンパクトに劣るのが弱点です。
もちろん値段にもよりますが、次のようなイメージで大体間違っていません。
- コンパクト:100点の音が1つだけ
- マルチ:60~80点の音がたくさん
電源が1つで済む
用意する電源が1つで済むのもマルチのメリットです。
エフェクターは個別に電源が必要なため、例えば5個のコンパクトを使うなら、5個の電源が必要になります。
複数のエフェクターを並べて使う方法【解説】マルチはそれ自体が1つの機材でしかないため、どれだけエフェクトを使おうと必要な電源は1つのままです。
実際に使ってみると電源が少ないのが楽だと実感できるでしょう。
操作が複雑
マルチはエフェクトの数が多く、コンパクトにはない機能がある製品が多いです。
そのため操作はマルチの方が圧倒的に複雑であると考えて差し支えありません。
コンパクトでやることといえば、いくつかのツマミを回して音を調整するくらいです。
一方マルチではエフェクトを選ぶ、並び替えるといった操作だけでなく、フルに使いこなすなら音響機器としての設定をする場面もあります。
とは言ってもそこまで不安に思う必要はなく、たとえマルチを初めて使うとしても、普段PCをよく触っている方であればそのうち使いこなせます。
アンプシミュレータとして使う
以上、主にエフェクトの数と質という点でマルチエフェクターについて見てきました。
しかしこれまでに書いたことはマルチエフェクターの特徴の半分に過ぎません。
マルチのもう1つの大きな特徴として、アンプシミュレータの機能があります。
アンプシミュレータとは、簡単に言えば「あたかもアンプから出てきたような音を再現する機能」のことです。
近年マルチエフェクターとして販売されている2万円~の製品には、ほぼこの機能がついていると考えて間違いありません。
実際のところ、マルチエフェクターとアンプシミュレータがほぼ同じ意味の言葉として扱われている感もあります。
もちろん、アンプシミュレータの質、つまりどれだけリアルな音かは製品によって大きく違います。
アンプシミュレータのメリットは、大きく分けて次の2つです。
- ヘッドホンから音を出せる
- PCにつないで録音に使える
ヘッドホン練習と録音ツールという2つの機能を考えると、マルチとコンパクトの違いは、単純に音の数と質だけでは語れません。
これはやや専門的な話ではありますが、初心者の方にもぜひ知っておいてほしい内容です。
ヘッドホン出力を持つ
アンプシミュレータのメリットの1つはヘッドホンから完成された音を聞けることです。
エレキギターは本来アンプを使って音を出す楽器です。
しかし日本の住宅事情を考えると、誰しもアンプを使って大きな音を出せるとは限りません。
そこで非常に便利なのがアンプシミュレータ+ヘッドホン出力です。
これならアンプを使えない環境でもヘッドホンを使ってギターを弾けます。
こういった機能はコンパクトエフェクターには全くないため、マルチ特有のメリットです。
録音に使える
加えて、アンプシミュレータの音をPCに送るとそのまま録音にも使えます。
オーディオインタフェースという機能を持っている製品であれば、これは大体できるはずです。
ギター→マルチエフェクター→PCとつなぐだけで録音の環境が整います。
録音の仕組みはここでは触れませんが、これもコンパクトエフェクターにはない大きな特徴です。
YouTubeに動画を上げている人が音作りに使った機材を見てみると、マルチエフェクター(アンプシミュレータ)を使っているが多いです。
マルチに向く場合、向かない場合
ここまでで、マルチエフェクターとは何なのか、コンパクトエフェクターとどう違うか見てきました。
これを踏まえると、マルチエフェクターが向くのは次のような場合です。
- 質はともかく、色々なエフェクトを実際に使ってみたい
- ヘッドホン練習したい
- 録音に使いたい
たくさんのエフェクトに触れたい
例えば初心者の方であれば、色んなエフェクトに馴染みがないはずです。
ディストーション、ディレイ、リバーブと言われても、それらは音の話なので言葉では実感できないでしょう。
そこで、「質はともかく、自分でいろんなエフェクトに触れてみたい」という方には、たとえ初心者でもマルチはおすすめできます。
ディストーションはこんな音、ディレイはこんな効果がある、リバーブはこんな感じ、コンプで音はこう変わる…といったことを、手を動かしながら勉強できるからです。
確かに初心者であれば最初は操作がよく分からなかったり、良い音が作れなかったりすることもあるでしょう。
しかし個々のエフェクトに触れてみるくらいの操作なら誰でもそのうちできます。さらに、最初から完璧な音作りができる人なんていません。
マルチは最低2万円の予算は考えてほしいため安い買い物ではありませんが、余裕のある方はぜひ検討してみてください。
ヘッドホン練習したい
そもそもアンプを鳴らせない場所に住んでいる方は、おのずとヘッドホン練習という選択にたどり着くでしょう。
その場合、アンプシミュレータ&ヘッドホン出力を持ったマルチエフェクターは有力な選択肢になります。
僕の経験上、下手に実際のアンプのヘッドホン出力を使うよりも、マルチの音の方がよっぽどいいです。
録音したい
ギターに慣れてくると、自分の演奏を公開したり、楽曲制作に使いたくなってきます。
すると録音環境が必要になってくるわけですが、その場合マルチのアンプシミュレータを使うのが手っ取り早いです。
難しい話になりますが、別途オーディオインタフェースを用意してPCに接続し、PC上でシミュレータを使う方法もあります。しかし、費用と手間を考えるとマルチの方がやはり手っ取り早いです。
マルチに向かない場合
反対に、マルチに向かない場合ももちろんあります。
分かりやすいのは、ある特定のエフェクトについて素晴らしい音が欲しい場合です。
例えば、一生使えるレベルのディストーションがほしいのであれば、マルチという選択は絶対にありえません。普通にコンパクトの中から探してください。
加えて、特に初心者の方で「とりあえず小さく始めてみたい」という場合はマルチを買う必要は全くありません。
というのもマルチはコンパクトに比べて1つの製品の値段が高いからです。
コンパクトで2万円といえばなかなかの高級品ですが、マルチであればむしろ安い部類です。
それならまずは5,000円~10,000円のコンパクトから良さげなものを試す方がいいでしょう。コンパクトなら、この価格帯でも素晴らしい製品はたくさんあります。
1種類の音色に特化しているコンパクトでも、エフェクターとは何かを知るのには十分です。
おわり
以上、マルチエフェクターとは何か、コンパクトとはどう違うのかについて解説してきました。
特に初心者の方はどこかのタイミングで、マルチを買うべきか、コンパクトを買うべきか悩むと思います。
その場合はここに書いたことを参考にしてみてください。